~説明会に参加した社数は微減、エントリーシート提出の社数は微増~
サマリー
- コロナ禍の就活生、「説明会に参加した」企業数の平均は8.8社。コロナ禍以前の就活生よりも少ない傾向に
- 就活では「いろいろな業界や職種を知ることができた」(55.0%)。コロナの影響で活動が制限されていたからこそ業界研究はしっかりと
- 「企業の求める人材像が分かりづらい」過去3年でトップ。志望企業に直接足を運べなかったことが要因か
- 人に会う機会、情報収集のための機会が制限されたと感じている就活生はおよそ3人に1人
調査概要
なかなか収束の兆しが見えてこないコロナ禍。その中でも例年どおり実施される新卒採用にかかわる企業関係者は、緊急事態宣言の発令や解除、感染者数など、日々変化する状況に振り回されてしまっていることかと思います。
このような環境で就活イベントや会社説明会、面接選考などを従来どおり対面式で行うことはリスクが高く、ためらわれます。緊急事態宣言下でも対応しやすいように、急ピッチで新卒採用プロセスのオンライン化を進めた企業も多いことでしょう。
そうしたこのコロナ禍における新卒採用のオンライン化は、就活生にどのような影響を与えたのでしょうか。また、就活生自身はどう感じているのでしょうか。入社を希望する企業がオンライン化に対応できているかどうかで、就活生たちの企業に対する評価は変わってくるのでしょうか。
DX関連の情報をお伝えする当サイト「まるごとDX」は、新卒採用プロセスのオンライン化についての調査を実施。今回はコロナ禍で就職活動を経験した2021年の新社会人と、コロナ禍以前に就活をした社会人2~3年目の先輩たちの活動状況の違いを比較・分析してみました。
調査結果
コロナ禍の就活、「説明会に参加」の社数は8.8社と微減。一方でES提出の社数は微増に
2021年4月からの入社に向けて、2020年4月~2021年3月に就職活動を行っていた2020年度就活生200人、2019年4月~2020年3月に就職活動を行っていた2019年度就活生200人、2018年4月~2019年3月に就職活動を行っていた2018年度就活生200人を対象に、就職活動で選考を受けた企業・団体の数を聞きました。
説明会に参加した企業・団体数では8.8社と、2020年度就活生が最も少なくなっています。特に、前年の2019年度就活生と比べると、2.0社減少していることが分かります。
一方でエントリーシート(ES)を出した企業・団体数は8.5社、筆記テスト/面接などの選考を受けた企業・団体数では5.7社と、どちらも過去3年間で最も多くなっています。また、内定を受けた企業・団体数も2.2社と、過去3年間で比較すると最も多くなっています。
このような状況だから、リスクヘッジのために選考を受ける社数を増やしたのか、それともオンライン化によって選考が受けやすくなったのか、コロナ禍で就活生たちの意欲はむしろ増しているようです。
Q. あなたは就職活動の際、どのくらいの数の企業・団体の選考を受けましたか?(n=600)※必須回答
就活では「いろいろな業界や職種を知ることができた」(55.0%)。コロナの影響で活動が制限されていたからこそ業界研究はしっかりと
就職活動をしていて良かったことについて、過去3年間の就活生の回答を比較してみました。
その結果、どの年の就活生でも「いろいろな業界や職種を知ることができた」が最も多く、特に2020年度就活生では55.0%でした。「いろいろな人に出会うことができた」については2019年度就活生の31.0%より0.5ポイント低いものの、2020年度就活生でも30.5%の人が当てはまると回答しています。さらに、「就活を通じて同年代の友人ができた」では2020年度就活生が最も多く、16.5%となっています。また「人見知りや引っ込み思案が改善された」が15.5%と、2019年度(7.0%)、2018年度(8.5%)の約2倍となっていました。
コロナ禍においては直接の訪問が難しく、またオンラインでの説明会を行っていない企業もある中で、どうしても企業研究については例年よりも不利だったはずです。さらに、採用担当者や志望企業の社員だけでなく、OBやOGや他の就活生といった就職活動を通して出会う人々との交流も平時に比べると困難です。
コロナ禍中において活動を制限されることで影響を受けやすいこれらの項目について、過去2年間の先輩たちと比べて回答率が高くなっていることから、2020年度の就活生はオンラインを上手に活用して、自分から主体的に行動することで就活を乗り切ったことがうかがえます。
Q. 就職活動をしていて良かったことは何ですか?(n=600)※必須回答・複数回答可
「企業の求める人材像が分かりづらい」直近3年で最多。志望企業に直接足を運べなかったことが要因か
就職活動をしていて不満だったことについてはどうでしょうか。
「この会社が自分に合っているのか判断が難しい」という回答がどの年代でも最も多く、2020年度就活生では47.0%でした。
「企業の求める人材像が分からない、分かりづらい」については2020年度就活生が29.0%と、他の年代より多くなっています。また、「説明会や面接など人に会う機会が多すぎて疲れた」では2020年度就活生が最も少なく、19.5%でした。
Q. 就職活動をしていて不満だったことは何ですか?(n=600)※必須回答・複数回答可
人に会う機会、情報収集のための機会が制限されたと感じている就活生はおよそ3人に1人
2020年度就活生200人に、コロナ禍での就職活動状況についてどう感じたか、答えてもらいました。
最も多かったのは「採用担当者やOB・OG、他の就活生など人に会う機会が制限された」で29.5%、続いて「業界や企業について研究・情報収集するための機会が制限された」が27.5%でした。
新卒採用プロセスのオンライン化については、「オンライン上では企業や社員の雰囲気が分かりづらかった」(25.5%)、「オンライン上で自分をアピールするのは難しかった」(19.0%)といった課題もあった一方で、「遠隔地の企業をエントリー対象にすることができた」(23.0%)、「企業側の工夫で例年よりオンライン上の情報が充実していた」(23.0%)、「オンライン選考のおかげで複数の企業に応募できた」(20.0%)といったメリットもあったと感じられていたようです。
Q.コロナ禍での就職活動について当てはまるものを選択してください。(n=200)※必須回答・複数回答可
調査手法
- 調査期間:2021年7月5日~8日
- 調査対象:22~27歳の会社員 600人
- 調査方法:インターネット調査
まとめ
調査全体を通して、コロナ禍によって就職活動を制限されたと感じた学生が多くいたことが分かりました。それでも、就活生たちはオンラインを活用しながら、それぞれのやり方で内定を獲得したようです。
新卒採用プロセスがオンライン化したことに関する就活生の感想については、まだ全ての企業がオンライン化できているわけではないこともあってか、”多数派”と言えるほどの支持を集めた項目は1つもありませんでした。まだ就活生の側で、はっきりとした評価を下せていないのかもしれません。
2020年度よりも、2021年度の方が新卒採用プロセスをオンライン化する企業・団体が増えることでしょう。2022年度以降、新型コロナウイルスの感染状況がどうなるか、オンライン化する企業・団体の数が増えるか減るかは不透明ですが、新卒採用プロセスがオンライン化されることにメリットを感じていた就活生は一定数存在していました。ひとたび動き始めたオンライン化の取り組みは、この先さらに進むことはあっても後戻りする可能性は低いでしょう。少なくとも今後、完全に対面式のみの採用プロセスに戻ることはないのかもしれません。
今回の調査では、オンライン説明会・面接に関する満足度や、説明会・面接で使われたツールに対する評価なども就活経験者に聞いています。次回のレポートでは、そうした就活経験者の声を踏まえて、新卒採用プロセスのオンライン化を推進する上での課題について、考えてみたいと思います。